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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「………」
「あたしの過去だけは、どんなに努力しても消すことが出来ないんです。その不可抗力的なもののせいで、朱羽が窮地に陥るくらいなら、あたしは去ります。だから専務。もしそういうことが起きた場合、その時は朱羽のフォローを」
「却下」
腕組をしながら専務は言った。
「専務!!」
「さっき、朱羽がお前を離そうとした時、あれはあいつにも苦渋の選択だったとはいえ、それでも朱羽に、ああいった選択肢もあったことが露呈した。だが結城が、朱羽の優しさという名の弱さを殴りつけ、お前との関係に出来たヒビを補強し、その選択肢を切り捨てさせた。結城との友情にかけても、あいつはこれからは、なにがあってもお前を離さねぇ」
「……はい」
「朱羽は、お前の過去を含めたすべてを愛してる。お前だけが人生のパートナーだと、朱羽はすでに覚悟を決めている。男の覚悟を甘く見るんじゃない」
「でも……っ」
「俺が朱羽なら、仮にお前の過去が問題になったとしても、お前を守るために強くなろうと努力する」
「……っ」
「出来ないのは、死ぬ時だけだ」
「専務……」
「俺が知っている朱羽は、お前に命がけの恋愛をしている。お前の過去を気にするような男であれば、もう既に見切っていたさ」
専務は薄く笑う。
「それにカバ。過去は過去だ。なにそんな"もしも"のことを思って、卑屈になっているんだ。お前は、そんな女じゃないだろう」
「……っ」
「最初からお前は俺に噛みついてきた。他の女のように、俺の肩書きや外見だけですり寄ってきた女じゃない。朱羽にもそうだっただろうが。だから朱羽は手こずりながらも、お前が欲しくて欲しくてもがいていたんだ」
「………」
「朱羽はな、アメリカに居た時、しばらく俺にも心を開かず、無感情で無表情だった。何年もかけて、しかもあいつがお前に会いたいとその一念発起で、ようやく表情らしきものが出てきた。だけど忍月コーポレーションに入れて、俺が……お前を恋しがって会いたがっていた朱羽を止めた。朱羽も監視されていたのがわかっていたから」
「………」
「俺のせいであいつは、俺よりずっと籠の中の鳥だった。今みたいに穏やかで嬉しそうに笑う顔、したことなかったんだぜ? 俺や沙紀の前ですら、大人びた……妙に達観した顔で笑ってたんだからな」
専務は嘲るように笑った。