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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「まあ、株主総会もまだだし、結城が社長になれるのか、俺も月代さんに言われた通り、一抹の不安も過ぎる。株主に挨拶をして反応を見ている結城もまた、裏では渋い顔をしているんだ。とんだ番狂わせの事態が起きるのではないかと」

 確かに不安からくるものもあるだろう。

 だけど三人が感じているのなら、それはもう最悪事態になる前触れなのではないか。

 だとしたら、それをみすみす見過ごすわけにはいかない。

 シークレットムーンを対外的にも安定させるには、結城が社長として常駐することだ。

 最低限それが、シークレットムーンに所属したままを選んだ朱羽の鎧になる。病に倒れた月代社長に、これ以上頼ることは出来ないのだ。

 あたしに出来ること――。

「……あの、専務……社長が、あたしに名取川文乃を落とせと言われたんです」

 専務は数度瞬きをしてから、驚いた声を上げた。

「はああ!? それ本気の話か!? 名取川文乃は俺だって会ったことがない、もしかして忍月財閥の当主が会えるレベルの……月代さんは会っていたのか!? ……いや、そんなことより待て。お前に落とせって?」

 色々とパニックになっているらしい。

 それくらいのネームバリューがあることを、専務は知っていたようだ。

「はい。彼女が味方につけば、忍月の中でもあたしが動きやすくなると。電話をしてくれているそうです」

「………」

「ラストミッションだと、言われました」

「月代さんが言うなら、都合がつき次第、早く動いた方がいいな。確かに彼女は、副社長の育ての親同然でもあり、押さえつける力がある」

「落とすってどうすれば……」

「それはお前の課題だ。だが多分、お前なら出来ると思う。月代さんは人選を間違わないから」

「はあ」

「自信を持て。名取川文乃にしても、朱羽のことにしても。お前は俺の可愛い弟が選んだ女だ。……俺の可愛い妹なんだよ。俺と結婚を決めてくれた沙紀にとっても、同い年だろうが妹だ。だからあいつ、はしゃいでいるだろう。沙紀は、妹を欲しがっていたから。いいか、お前の家族は、ここにもいることを忘れるな」

「……っ」

 力強い。

 社長を彷彿させる専務のこの熱情と温情で、朱羽も助けられてきたのか。
 
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