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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「お前が朱羽を支えてくれるなら、俺はいつだって、朱羽だけではなくお前のためにも、全力で助力しよう。お前達が道を誤りそうなら、俺はどんな手段をもっても全力でそれを止める。だから脇道に惑わされず、ただ前だけを見て、走れ」
「ありがとう、ございます……」
涙ぐんで俯いたあたしに、専務は笑いながら頭を掻いた。
「しかし、俺、結城達に言ってたんだわ。お前と朱羽はまだ結論つかずに、俺に遠慮してへんな顔してここに来るはずだと。まさか、朱羽があんなに嫌がっていた次期当主を決意して、お前ごと本家に入る覚悟だったとは。朱羽がそこまで、お前を得たことで強くなっていたとは。いや、お前が朱羽を受け入れて、本家に乗り込むまでの覚悟をしていたのも誤算だ。……これもある種の化学変化か。本当にお前らは、俺を楽しませてくれるよ」
専務は笑った。
「お前達が退職願を持ってくるなど、俺との話が違うから、結城達は焦ってお前を詰った。全部見通せなかった俺のせいだ。すまなかったな」
「そんな、とんでもありません! あたしも朱羽も、もっと皆と話し合えばよかったんです。ふたりで、話を進めてしまったから。彼らを傷つけてしまった、当然の報いだと思っています」
「はは、そうか。朱羽も痛かっただろうな、結城、かなり必死だったから。いい友達を、お前も朱羽も持ったよ。……結城も、お前に惚れてたんだろう?」
あたしは返事できなかった。
「お前達がいない間、あいつ真剣に朱羽を忍月から救おうと声を出してくれたんだ。お前を奪う男を本気で助けようと」
「……結城らしい。そういう奴なんです」
「はは。なぁ、カバ。朱羽から、あのクソババアやジジイの話を聞いてなおも、お前は朱羽と本家に入ろうするほど、朱羽に惚れてくれてありがとうな」
「別にお礼なんてっ」
「俺も朱羽も、いい女と仲間に巡り会ったな。こんな問題児達なのにさ」
専務は嬉しそうに笑った。