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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 


 ~Wataru Side~


「渉、向島取り下げたって! ネットにも出てるし、木島弁護士から連絡があった!」

 カバと話している時、そう沙紀が喜んで飛び込んできた。

 俺もカバの後を追って部屋から出ようとした時、俺の電話が鳴った。

 "向島宗司 携帯"

 ここ何年も、かかってきたことがない電話だった。

 沙紀が見守る中、俺は電話を取った。

『そういうことだ』

 開口一番、なんだそれは。

「意味がわからん」

『ま、渋々嫌々ながら、仲良くしようや』

 なんだこの茶化したような物言いは。

「お前、喧嘩売ってるのか?」

『ああ、腹立たしいからな。お前の弟といい、その仲間といい。とにかくお前が非常にムカつく』

「俺は愚痴を聞いている暇はないぞ。それだけなら」

『……月曜の株主総会、荒れるぞ』

 低いその声は、冗談には思えない響きがあった。

「え?」

『あいつを抑えられる切り札を用意しておけ』

 "あいつ"

 直感的に、副社長のことだと思った。

「どういう意味だ、おい、向島っ」

 言うだけ言って、電源まで切りやがった。

「くそっ、なんか知ってるならそれを言えよっ、この陰険野郎めっ!!」

 スマホに向かって怒鳴ると、沙紀が心配そうに見ていた。
 
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