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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「うおっうおっうおっ」

 木島くんがまたもやおかしな声を出した中、社員達が結城に倣うようにして少数でも寿司を食べる作戦に出た。


「ニシンもなくなりました」

 ……ニシン!! なんとなくわかりそうだけれど、魚へんの右側がごちゃごちゃして画数が多そうな気しかしない。

「タコも完売です!」

 ……タコ!! そんな漢字、知らんがな。

 あたしのお腹がきゅるきゅる鳴るが、涙目で我慢した。

「うう……お腹すいたよ……」

 思わず突っ伏してそう嘆くと、そんなあたしを見兼ねたかのようなタイミングで、杏奈が声を出した。

「そうだ、真下ちゃん。杏奈、和菓子大好きだから、駅前の和菓子屋さんで和菓子買ってきたらね、真下ちゃんの言うとおりだった。杏奈めちゃ後悔」

 ……おや、杏奈は和菓子が大嫌いだったはず。

 すると衣里が咳払いをしてから言った。

「やっすいあんこ使ってたでしょ?」

「あははは、そうそう!」
 
 ……それに対して衣里が、杏奈に突っ込むどころか、わざとらしい咳払いをしてから口にしたのは、あまりに不自然なではないか?

 ゴホンゴホン!

 急かすような衣里の咳。

 また教えてくれてるの?

 だったら……。

 杏奈が和菓子好きだと嘘を言ったおかげで、衣里は和菓子の内容を言えた。

 安いあんこ。

 "あんこ"を使いたかったから、杏奈は和菓子にしたの?


 あんこみたいな魚いたっけ?

 あんこ……あんこう?

 魚へんに安で、あんこう?

 "鮟(あんこう)"

 これは"こう"まで読むのか自信がなかったけど書いてみた。

「これだけお吸い物が美味しいなら、味噌汁もきちんと出汁とられているんでしょうね」

 朱羽がお吸い物を飲みながらそう呟き、咳払いをした。

「ヴァイスも喜ぶ、堅いかつお節を削ってるのかな」

 これはあたしにもわかった。

 家でよく使うかつお節は、包装に漢字で書いていたから。

 "鰹(かつお)"

 よし、これで6つだ! あとひとつ。
 
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