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第9章 対峙して、知るもの

　んなこたぁ、端から――百でも千でも、承知してんだよっ！


「……」


　それを言葉として、発した訳でなくとも。


「な、なんですか……？」


　この顔つきが変わったのを、彼女の方で感じ取ったようだ。

　俺は身を少し乗り出して、それまでのよそ行きで遠慮がちな口調を改め――言う。


「アンタ――真に会ったら、どうする気だ？」


「言うまでも、ありません。東京に連れて帰ります」


「まあ、そうなんだろうけど。果たして――アイツが、素直に従うかな」


「無理にでも、従わせます。あの子の帰りを、多くのファンが待っている。これ以上、我儘を聞くわけには参りません」


　上野さんは厳しい表情で、きっぱりと言い切る。

　が――。


「それじゃ、問題は振り出しに戻るだけ。真は自分の意志で、其処から飛び出して来たんですよ」


「それは――貴方には、関係ないでしょ！」


　思わず声を荒げ、上野さんは気まずそうに周囲を気にした。その後、咳払いをし自らを諌めるように、またコーヒーを啜る。

　その様子をじっと眺め、俺はポツリと――その言葉を口にした。


「ホントの唄」


「――！」


「何か思い当ったって、顔してる。じゃあ、一つ質問。どうして真は、ホントの唄を――唄えない？」