パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第9章 対峙して、知るもの

「ホントの唄、ですか……」


　彼女は、何か思うようにして呟く。そうして――


「私共は、天野ふらのを看板とする――言わば、弱小プロダクション。彼女を売り出すに際しては、大手レコード会社の意向に従うのも必須なのです。若い女性ファンを取り込む為に、それまで仕掛けたプロモートは決して誤りであったとは思いません。現にそうしてきたからこそ、今のふらのがあるのですから」


「だが、そこに無理があったからこそ――」


　と、口を挟もうとするが。


「貴方に、私共の苦労が――例え１ミリであっても、理解できるのでしょうか」


「っ……！」


　強い言葉を被せられ、俺は鼻先を押さえられている様相だ。


「ふらのだって、わかっている筈です。あんな気性の子だから、一時の感情に身を流されただけ。よく頭を冷やして考えれば、帰るべき場所に帰るより他はありません」


　淡々としたその口調が、また俺の勘に障る。


「それって――結局は、アンタの都合じゃないのか」


「どういう意味です？」


「俺という男は、どうも――物事を穿った角度で、眺めてしまうタイプでね。いや――悪癖だと自覚はしてるんだけども」


「……？」


　俺は頭を掻きながら、我ながら呆れる様な卑屈な笑みを作った。


「真は金蔓だと――そう言ってるように、聴こえるんだよ」