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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて

「ねえ――なんで、今夜に限ってツインの部屋なの?」


 俺の居るベッドの端に腰掛けると、真はそう訊ねてくる。


「ん? まあ、なんとなく」


「ふーん、そっか……」


 その刹那、ゆっくりと真の顔が近づいていた。


「山に行くのなら、明日は早いぞ。今日はさっさと寝た方が、身の為だ」


「私なら――平気だよ」


 そう告げて迫る唇をかわすように、俺は咄嗟に身体を起こす。

 その態度を不審に思ったのか、真はまるで独り言のように呟いた。


「あれ? 私、なにかオジサンを怒らせるようなこと、したっけ?」


 俺は立ち上がると、その背中に向けて言う。


「怒ってねーだろ。ちょっと、風呂行ってくるわ」


「そう……わかった」


 微妙な空気を残したまま、俺は部屋を出て行った。
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