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第2章 緊急モラトリアム

「……」


「オジサン――どうかしたの？」


　ペットボトルを掴んだまま、固まっている俺。真は不思議そうに、その顔を仰いでいる。


「あ、悪い……」


　慌てて手を放すが――


「オジサン、なんか顔が――紅いよ？」


　その指摘を受け、俺は「はっ！」と我に返った。


　純な高校生か、お前はっ――!?


　内心で自らを激しくツッコみつつ、俺はさっきまでの態度を痛烈に恥じる。

　すっかりと、真のことを意識してしまっていた。小娘に翻弄されている自分が、何よりも情けなかった。


　全て元凶は、その恰好にあり……。


　横目で改めて真の姿を確認すると、ふうっとため息を吐く。



「ちょっと、出かけてくるからな」


　俺は無愛想にそう言うと、財布と車のキーを手にした。


「どこに？」


「お前の着る物を、買って来てやるんだ」


「あ、そうなの？　だったら、私も一緒に――」


　嬉しそうにして、そう言う真を――


「その恰好で、出歩かれてたまるかっ！」


　思わず俺は、怒鳴りつける。そして――


　――バタン！


　苛立ちのままドアを閉めると、真を一人部屋に残し――部屋の外へ。