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第2章 緊急モラトリアム

「あ、失礼――」


　若い主婦らしき女性と肩を触れ合わせ、慌てた俺は恐縮しきりに頭を下げる。何やら訝しげに浴びせられている視線が、とても痛々しく感じられた。

　別に俺が選んでやった服なんて、真が気に入る筈もなく。俺の目的は只々、あの暴力的までに人を惑わそうとする肢体の露出を下げること。その一点に尽きた。


　ああっ、もう――何でもいいだろ。


　そこは中年男が、いつまでも徘徊を許される場所ではない。そんな自分の立場を弁えた俺は――

　色物のＴシャツを数点。地味なワンピース。ジーパンとジャージの短パン。果ては肌着に至るまで（フリーサイズでスポーティーっぽいものをね……）。

　適当に目についた衣服を、次々と買い物カゴにぶちこんでいった。


　そうして、会計を果たさんとして、レジに赴いた時である。


「……」


　大量の女性衣服がバーコードを通される様を、何とも居心地悪く見守っている俺。

　すると――


「あの――」


　若い女の店員が怪しげに見つめたような気配を察し、俺は激しく取り乱した。


「いやっ、姪っ子がですね……急に訪ねて来た、ものですからっ」


「そ、そうですか……。それで、当店のポイントカードは、お持ちでしょうか？」


「あっ……はい……あり……ます」


　なんだって、こんな恥辱を……？


　俺は恥ずかしさに顔を俯かせながら、財布の中より取り出したポイントカードを――そっと提示。