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結花の御主人様
第26章 結花の夢
「なんで…言うの?」
「龍社長??」
明がじっと龍を見ている。
「龍社長…それを言ってはいけませんよ。」
明が悲しそうな表情になった。
「いえ…今だから…
俺は胸を張って言うのです。」
「社長?」
「明社長…俺は俺は…
今では中堅会社を経営して
多くの社員を率いていますが…
それでも俺はまだまだ未熟でした。
そんな俺を助けて支えてくれた二人。
俺はこの二人に幾度となく助けて貰った。
そんな二人を俺は何よりも誇りに思います。
そして二人を育んでくれた風俗と暴走族…
俺はその二つの環境と職種に感謝します。」
じっと明を見て龍は言い切った。
「社長…」
「世間では差別というものがあって
それが原因で優秀な人材が
うもれたまま過ぎてしまっている。
そして偏見が世間をゆがめて…
俺はそんな社会に反吐が出る。
だから…だから…
そして、俺の優秀な主任、
俺の愛する妻…
二人にはそんな惨めな想いは
させたくないんです。
だから俺は胸を張って今後も
二人を誰にでも紹介します。
それで差別、偏見を持つ相手なら
取引しなくて良い。
そんな相手は長くは続かない。」
「そうですか…
いや、御立派!!」
明は拍手を送った。
「龍社長…良い部下と
奥様を射止めましたな。」
「はい…」
明は上機嫌になって龍との取引を
3倍にしてくれた。
「有難う御座います。」
優子と結花は誰に言われるまでもなく
明に頭を下げた。
ニコニコと明は
「自分の過去は…
置いてきなさい。
私の恩師が…よく言っていた言葉。
「過去は振り返るな、
今を頑張れ、前を見ろ…」
あのお方が生きておられたら…
貴方達には必ず言うでしょうね。
明はそう言って立ち上がって龍を
がっちり握手をした。
「これからも宜しくお願いします。」
「こちらこそ…」
帰り道…
優子と結花は無言で車に乗っていた。
「どうした?」
「社長…あれでよかったのですか?」
「良いんだよ…
君達は俺にとって何より大切だから。」
結花は龍の妻として
新しい道を歩き出した。