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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
月曜の朝、ムズムズとした感覚に真紀は目を覚ました。
まだ、起きるには、少し早い。

「・・・・おしっこ」

自然の摂理には、敵わない。我慢出来ず、仕方なく起きることにした。

新しいベッドの寝心地は、悪くないのに、ぐっすり眠れなかった。
すぐ隣の部屋で寝ている男のせいだろうか。
いつ襲ってくるかも分からない、身構えていたというのに、何も仕掛けて来ないまま月曜がきて。
なんとなく、拍子抜け。

おまけに、同居宣言の後は、気味悪いほど、優しくて紳士的だった。
土曜の夜、歓迎会してやると、連れて行かれたのは、自分では選ばないような高そうな鮨屋。
好きなもの食えと言われても、メニューが無い。何を頼んでいいか分からない、迷っていると。

「刺身と適当に一貫ずつ握ってやって」

お蔭で、時価ものを遠慮すること無く、お腹一杯、堪能した。
日曜は、買い物行くのに車を出し、百貨店で食器買うのも、スーパーで食材買うのも賢也がお金を出した。
半分出すと言えば「いらねぇよ」ぶっきらぼうに断られた。
荷物は、全て賢也が持ち、道を歩く時は、車道側を歩く。
車を乗り降りする時は、助手席のドアを開ける。降りる時には、手まで差し出す。
目が合うと優しく笑いかけてくるから、その度にときめいて。
厳ついくせに、あれは反則だ。

「単なる野獣かと思っていたのに」

「俺のことかよ」

ドキッ。真紀の体が小さく飛びはねた。

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