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果てのない海に呑まれて
第9章 理解し得ぬ想い



耳元に温かい滑りが押し付けられる

彼が触れる水音に、身体がぞくりとする



「理解できないのであれば、まずはその身体に覚え込ませる」

「あっ……」



耳を甘咬みされてリリアは自分の奥が疼き始めるのを感じていた

頭では拒絶しても、身体は正直だ

三日三晩も海の上で繋がった相手をそう簡単に忘れはしない



「ンッ…」



だがあの時とは何かが違っていた

彼女の唇を求める彼の眉は悩ましげに中心に寄せられ、目を閉じて必死に相手を貪っている

求めろと言っている方が、相手を求めてやまないような−−−



"いや!"



それを感じ取った時、リリアは大きく顔を振って逃れた

そんな風に求められるのは、弄ばれるよりもずっと嫌だった



「リリア……!」

「触らないで!」



レオンの頬に鮮烈な一撃が飛ぶ

リリアは肩で息をし、殴られた方は唖然としていた



「いい加減にして! 何様のつもり!?」



一方的に求められるのは、本当の意味で"慰み者"になるということ

大嫌いな男の、よく知りもしない心の傷を癒すということ−−−



「私を救えるのは自分だけとか、ただの傲慢じゃない! 本当にそうしたいのなら私のことは放っておいて! 相手が欲しいなら他の人を当たって!」



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