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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。



「フェリペ様って、さっきあの人たちが言ってた……」

「ああ。あの方が亡くなったから俺はあいつの従者になった」

「……」



話が重すぎて何も言えない



"だからあの人はあんなに真剣に……"



大切な者を失くした気持ちがよく分かるのだろう



「その……お兄様もご病気で?」

「いや。フェリペ様は何者かに殺された」

「…っ……」

「だからあいつは簡単に街に出ることが出来ない。あんなに人と接するのが好きな人間が」



彼のーーー彼らの辿ってきた道は、自分が思っていたよりも遥かに険しいもののようだった



「レオンは今でこそ学があるが、兄のフェリペ様と違って大学には行っていなかった。というより、十を過ぎた頃から既に海に出ていた。

だからあいつは当主にはならないと言った。当時まだ十一だったジェーニオ様の方が前途があると推してな」



リリアはあの嫌な男とそれに対する市民の態度を思い出す



「それは……どう考えても失敗だったんじゃ……」

「お前、それを屋敷で言うなよ。面倒な敵を作りたくないならな。まぁ今はいいだろう。

それにあの方には性格以外にも問題があった」

「……?」

「よく考えてみろ。あの兄弟、似ていると思うか?」



"どちらも整った顔立ちだとは思うけど……"


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