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砂の人形
第2章 パレードの夜
「姫様、申し訳ありません。僕は」
「いいの」

 冷たい相槌。姫様はうっすらと目を開けていたけれど、もう僕を見てはいなかった。見る必要もない。僕の本心などすでに見抜かれているだろう、姫様の太ももには、僕の張り詰めたものが当たっている。

「お父様のご命令では、仕方がないもの……」

 枕を掴んでいた姫様の拳が解けた。強張った背筋の力も抜けた。姫様の顎が上がり、上下する喉元が鎖骨にかけて、とろけるような曲線を描く。

 仕方ない……そんな風に言われるとは思っていなかった。もちろん、こんな状況を姫様が喜ぶはずがないことは理解している。だけどそれでも僕は、どこかで期待していた。「あなたでよかった」と、そう言ってくれることを。

 僕は、肉の膨らみをもう一度強くすりあげる。姫様は鼻をならして身じろぎした。充血した先端を唇で包み込むと、姫様の体が震える。声は聞こえなかった。その意固地さが嗜虐心を誘う。執拗に舐っても、姫様は溜息ひとつ漏らさない。ただ時間が過ぎるのを待っているその姿は、僕を拒んでいるようで腹立たしい。

 姫様の体に馬乗りになって、耳元に舌を這わせる。そうしながら、すらりと伸びた足を撫でて長い裾をたくし上げ、下着越しに深い溝に触れる。そこは期待していたよりずっと熱く湿っていた。

「気持ちいいですか、姫様」

 すぐ耳元で囁くと、姫様は震えを噛み締めるようにして答えた。

「そんなわけないでしょ。お父様の命令でなければ、こんなこと」
「でも、こんなに慣れてる。これまでもご自分で慰めていたんでしょう。一体いつ、こんなことを覚えたんですか?」

 姫様の暗い瞳の奥から、また涙があふれてきた。傷つけてやった。僕が傷ついたのと同じように。その征服感が下腹に渦巻いて溢れてしまいそう。姫様は恥辱で震えながら、顔を背けた。下着を下し力任せに足を開かせても、ぬかるみに舌を押し当て、上へ擦りあげても、嗚咽も嬌声も上げなかった。体は正直に濡れているのに、姫様は全部無視してしまうつもりらしい。そんなこと無理に決まってるのに。

「……テーゼ!」

 蜜を絡めた舌で菊座に触れると、姫様が甲高い声を上げた。細い両腕を全力で突っぱねてくる。抑え込む必要もない、非力な腕だ。
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