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砂の人形
第9章 耳をふさいで
「怖いの……っほんとはどこにも行きたくないの。終わりにして、お願い、テーゼ……」

 その言葉に応えようにも、僕の体は言うことを聞かなかった。それでいい。この人が生きていける場所は、僕の隣じゃないから。

 姫様の体が一際大きく反り、指をきつく締め上げる。呻くような声を漏らすと、彼女は砂の上に倒れ込んだ。それでも執拗に触れようとして、体を抱き上げる。その体はすっかり力が抜けて、姫様は気を失っていた。

「姫様」

 抱きしめて、豊かな黒髪に顔を埋める。この小さな頭は、一時でも安らいでいるだろうか。サルーザ様のこと、国民のこと、悩み始めれば辛いだけだろう。でもペテ様に嫁げば、きっと幸せにしてもらえる。きっと僕に感謝しますよ。

 だからたまには思い出して、僕を恋しく思ってください。僕はいつもそうしています、きっと。
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