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砂の人形
第2章 パレードの夜
 それ以上は聞きたくない。これ以上なにも失いたくなかったから。いや、失ってばかりでもない。少なくとも、輿入れするまでの間はずっと、姫様の体は僕のものだ。僕だけのもの。

 僕は姫様の口をタオルで塞ぎ、寝台の上に押し倒した。それから両足を肩に抱えあげる。

「噛むならタオルにしてください。すぐ終わります」

 僕は舌を伸ばして、姫様の蜜を舐めとった。姫様がタオルを噛み締めた音が聞こえる。それだけで。腰の炎が燃え盛り、僕を苦しめる。果たしてしまえと、心のどこかで思っている。だけどどうだ? こんな下賤の手にかかったとしたら、この人はもう誰にも嫁ぐことができず、この敵意だらけの城の中で一生一人ぼっちだ。

 本当は知ってる。僕はあなたを愛しているし、あなたも僕のことを思ってくれている。何度、この宮殿から連れ出してしまおうと思ったか分からない。だけどあなたはあの砂漠の放浪に長くは耐えられないし、盗賊上がりの僕ではあなたを幸せにはできないから……無理に遠ざけようとして、こんなところまで来てしまった。

 あの時、愛してると伝えていたら、姫様は僕を受け入れてくれただろうか。僕が望むように、僕を求めてくれただろうか。時々そんな風に考えることもある。だけど僕はあの瞬間を何度繰り返したって言わないだろう。その後の行為が、これまでの想いまで汚してしまう気がするから。

 あの人に愛されることより、あの人を幸せにすることを選んだ。その矜持だけは無くしたくなかった。
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