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砂の人形
第8章 白昼夢
 肌と肌の間を砂が滑り落ちていく。それだけで背筋に喜びが走って、私はテルベーザの背中をかき抱いた。

 二日目の昼、私とテルベーザは、小さな砂丘の陰で砂を浴びた。何の申し合わせもなかったけど、そうしてくれると思ってた。駱駝の上ではできないことをしてくれると。

「テルベーザっ……! だめ、また……!」
「どうぞ」

 耳の縁をついばみながら下腹部を弄っていたテルベーザは、首筋から胸に、わき腹に、口付けしながら秘所へ向かって降りていく。そんなのじゃ足りないのに。私が欲しいものは違うの。それを伝えても、いいんでしょ?

「テーゼ、やだ……! そうじゃなくって」
「どうされたいですか?」

 私に覆い被さったまま、興奮した眼差しで私を見上げるテルベーザ。じれったくて、恥ずかしくて、声が震える。

「お願い、……入れて……」

 顔から火がでたんじゃないかと思った。テルベーザが口元を強ばらせて、視線をさまよわせる。言うんじゃなかったと思う反面、望みが叶うかもれない期待が、私の胸をねじ上げる。

「お願い、ねぇ、テーゼ」
「姫様」
「あっ……その、ダメだって、分かってるけど」

 声色ですぐに、断られると分かってしまう。テルベーザの言葉を遮って、私はから回る言葉で言い募る。乾いた頬に触れると、彼は私を見下ろした。困っているの? 呆れているの? くすんだ翡翠みたいな不思議な眼差し。いつだってこうして私を見つめてくれるのに、その奥に隠した本心は決して見せてくれない。だから私は不安になったり、希望を持ったりしてしまう。

「だけど……できることもあるでしょ? あの……私の部屋で……してたみたいに」
「あんなこと必要ありません」

 強張った怖い声。私を諦めさせたいときの声。熱い涙がこみ上げる。その意味を聞こうともせずに、テルベーザは私に浅く指を浸して、ごつごつとした関節をゆるゆると、執拗に擦り付ける。そうしながら親指で一番好きな場所を弄ばれると、私はすぐに高ぶってしまう。それじゃ満足できないのに、体だけが喜ばされてしまって、その奥の大切なものがひりひり焦げ付いていく。

「こっちの方が好きでしょう。乳首も甘噛みしましょうか」
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