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潮騒
第17章 終章 ー凪ー
晩年、孫に、

「おじいちゃんてどんな人やったん?」

と聞かれた菊乃は、笑いながら

「勝手な人。あの人が死んでからが私の人生。」

とうそぶいた。

それでいて、孫がケーキやクッキーなどを作ると、存外に甘いものが好きだった正一郎を思い出すらしく、

「おじいちゃんが生きとったらどんなにか喜ぶやろうねぇ…」

と涙ぐみ、必ず

「おじいちゃんに少し供えてやって」

と言った。

孫には、彼女が祖父を好きだったのか嫌いだったのか良く分からなかった。


そして、正一郎の死から三十年余り。
菊乃は静かに永眠する。

明治の末に生まれ、大正、昭和、そして、平成。
三つの時代を駆け抜けた彼女の人生は、時に時化、また時に凪ぎ、まるで、海そのものだった…
と彼女の人生を思う時、孫娘は感じるのだ。




ー了ー




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