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茜色の空に
第10章 失われた時を求めて
気がつけば俺が地元を逃げ出してから、10年の月日が過ぎ俺は26歳になっていた。

もう四捨五入すると30歳に近い。

俺は、22歳を過ぎた頃には既に高木夫妻から認められ晴れてスタイリストになり、一度広い世界を見てこいと言われて東京の美容室で働いている。

高木夫妻の店とは違い、指名のノルマやスピードや売上を求められシビアではあるけど、どうやら客に評判はよく給料も一部歩合制でうまくやれている方だと思う。

あれから玲奈とは、たまに連絡を取り合っていた。

玲奈は高校を無事卒業し、短大に入って無事に保育士の職に就いた。

彼女にも新しい世界が広がりしばらく友達のような兄妹のような煮え切らない関係を続けていたが、やはり彼女の気持ちを考えると手を出したり好きだという気にはなれず、そのまま俺はあの土地を離れた。

やっぱり相変わらず、俺の決意は煮え切らないままで、人と心を通わす事を避けて一人この東京という土地で暮らしてる。

本当は、こんな東京みたいな落ち着かない土地に来るつもりはなかった。

誠さんに無理矢理追い出された、って言い方がむしろ正解。

「お前だったら、きっと立派になってここに戻ってくるかどこかでお前だけの店をやれる」

そう言って、俺を誠さんは送り出した。

毎日がめまぐるしく過ぎていき、気がついたらもう東京に来て4年の歳月が経つ。
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