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茜色の空に
第12章 想い出の跡地
倫子がその言葉を聞き、俺の好きな笑顔で頷いて言った。

「やっぱりどんなに離れていても、生まれ育った町に帰って来たいとおもうのは、人間の性なのでしょうね。

私もやっぱり田舎だし観光地で東京の子に羨ましがられるけど、やはり東京は自分の居場所ではなく感じてしまうのです。

でもあなたと一緒ならば、どんな苦難も二人で乗りこえられると思うのです。」

ああ、なんで彼女にこんなに夢中になるのか、俺は初めて解った気がする。

もちろん、彼女は美人だ。

彼女自身は気づいてないだろうけど、町中で男がつい振り返るくらいの美人。

でもそれだけじゃない。

彼女は俺を色眼鏡で見ることもなく(最初は嫌われてたが)、俺のダメなところや俺の気持ちを何気なくいつも汲んでくれる。

そんな優しさに俺は惹かれてやまないんだろう……そう思った。

「倫子……」

吸い寄せられるように、俺は彼女の唇に自分の唇を重ねていう。

「いますぐにじゃねぇし、もっと自分に自信がついて男としてちゃんと自立してからいうけど。

俺の家族になってくれねぇか?

俺、そのために仕事もがんばる……ちゃんと店持てるように今以上に金もためる。

だから、家族になって俺と一緒にこの町に帰ってこよう。

な?」


俺がそう言うと、倫子はその綺麗な瞳から綺麗な雫を一筋流した。

それから俺は夢を見た。

俺と倫子がいて、栄吉と鈴木が笑っている。

親方もいて大人になった月光と俺が仲良く飯をくってる。

いつかそんな日がくるといい、そんな夢。

思い出の跡地で、俺は優しい夢に包まれていた。

未来を信じて。
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