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茜色の空に
第5章 真夏の夜の悪夢
すると、そこに入れ替わりで香水臭い女が入ってきた。

倫子が一瞬固まる。

まぁ、若いケバい女が入ってきたらびびるだろう。

若いって言っても、こいつもう32だけどな。

「悪いな、倫子。
ちょっとはずしてくんねぇか?
一応あんな格好だけど、あいつ母親なんだ。」

そう言うと驚く。

まぁ、髪の毛金髪(俺と違って人工)、タイトなヒョウ柄のワンピース、真っ赤な口紅に濃い化粧……世間の母親像からは程遠いよな……

倫子は礼儀正しくババアに挨拶し、遠慮がちに病室を出る。

ババアは倫子を見送って言った。

「私が嫌いな反動かしら。
随分と優等生タイプが好みなのね。」

そう言い、傍らの椅子に座る。

「今更なんの用だよ。月光がいなくなったときもいなかったくせになんなんだよ…」

俺が右手を強く握りながら言った。

ババアはため息をつきながら言った。

「仕方ないわよ、あの子はどうせいつかは連れていかれる子だったのよ……
まぁ、あんたが寝てる間に白井の妻から手切れ金をもらったわ。
結局頑張ったけど男の子は産まれなかったらしく、どうしてお前みたいな女とか嫌味は言われたけど……」

まぁ、あのクズの嫁にしたらたまんないだろうな。

見てくれはいいけど、頭のなか空っぽだし金のことしか興味がない女には跡継ぎ産まれて、自分にはできないとか屈辱だろう。

しかも身内の俺から見ても、月光は美形に育つのは間違いない。

月光がつらく当たられないかが心配だ。

「それでね、海渡……話があるの。」

ババアがいままで見たこともない真剣な表情で俺に言った。
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