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令嬢は元暗殺者に恋をする
第10章 新たな出会い
 どうしよう、と思いあぐねるサラの回りを突如、どこから現れたのか、数人の男たちが取り囲んできた。

「お嬢ちゃん、こんなところで何をしているのかな?」

 声をかけてきた男たちは、サラの顔を見てにやりと笑った。

「可愛いねえ。もしかして、こういう所で働きたいとか? だったらいい店、紹介するよ」

「お嬢ちゃんならすぐにたんまり金を稼げるさ」

 男たちのとんでもない勘違いに、サラは慌てて違うと手を振った。

「ち、違うの、私は人を探して……」

「いいから、いいから。俺たちについてきなよ」

 男たちはサラの言葉に耳を傾けようとはせず、強引に腕をつかんできた。

「ほんとうに違うの。やめて!」

 取り押さえてくる男たちの手から逃れようと、サラは身をよじり抵抗した。

 さらに、叫び声を上げようとするサラの口を男の手がふさぐ。しかし、彼女も負けてはいない。ふさいできた男の手に、思いっきり歯をたてて噛みついたのである。

「このがき!」

 なおも暴れるサラの頬に、男は平手を食らわせようと手を振り上げたその時。

「よしなよ。嫌がってるよ、その娘(こ)」

 ひとりの少年が男たちの粗相を咎めに割って入った。

「何だあ? てめえは?」

 男たちの注意が、現れた少年へといっせいにそそがれる。
 取り押さえられたまま、サラも少し離れたところに立つ少年に視線を移す。

 年齢的にはハルと同じ十七、八歳くらい。
 整った容貌はどこか女性的で、明け方の空を思わせる濃い紫の瞳が印象的である。

 無造作に首の後ろで束ねられた腰まである長い髪が、吹き抜けていく風に揺れる。
 かなり上背のある細身の身体つき、けれど脆弱さは感じられない。
 何故なら、着くずした上着からのぞく胸元は鍛え込まれた強靱さをうかがわせていた。そして、腰には一振りの長剣。
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