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令嬢は元暗殺者に恋をする
第11章 裏街へ
「ど、どうしようっていうのよ」

「どうして欲しい?」

 シンはにやりと笑った。

「どうしてって……どうもして欲しくないわよ!」

 サラは腕を振り上げ、シンのあごに渾身の力を込めてこぶしを叩き込んだ。

 うわっ、と情けない声を上げてシンはあごを押さえ込む。

「な、殴るか、女がこぶしで殴るか……」

 信じられない、とシンは怯える目でサラを見返す。

「口ほどにもないわね」

 埃を払うように両手を叩き、サラは勝ち誇った笑みを浮かべた。そして、ふいっと視線をシンからそらし再び歩き出す。

 消沈した顔の哀れなシンは、怒る気も失せたのか、もはや何も言い返すことができず、黙って彼女の後に続くのであった。

「もっとも、そうやって強気でいられるのも、今のうちだからな」
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