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令嬢は元暗殺者に恋をする
第11章 裏街へ
「しっかり、気をもった方がいい」

「何なの、この匂い……」

「まあ、よくない薬だな」

「よくない薬? 何それ?」

 にやりと笑ったシンは、見てみろというように視線を横へ移す。

 シンの視線につられ辺りを見渡したサラの目に、そこかしこで、堂々と薬を吸飲している者たちの姿が目に飛び込んだ。

「この匂いを嗅いでどうして、あなたは平気でいられるの? さては、あなたもよくない薬の常習犯ねっ!」

 そこまで決めつけなくともよいものを、顔を歪めサラは険しい目でシンを睨み上げる。

「冗談言うな。俺だって、気分が悪いんだ」

 それでもサラは疑いの目をやめない。

「あやしいものね」

「ここで俺が倒れたら、あんたどうするつもりだよ」

「あなたなんか捨てて、急いで逃げるに決まってるでしょう?」

「ひとりでこんな所を歩いて見ろ、即、頭のおかしい連中に取り囲まれる」

「そうは言うけど、あなた全然強そうに見えないし、頼りにならなさそうだもの。そうね、あなたの武器はそのきれいな顔くらいかしら」
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