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令嬢は元暗殺者に恋をする
第13章 心を動かされたのは……
「ハル! おまえ何をするつもりだ」
咄嗟にシンの指先が腰の剣にかけられる。
場合によってはこの剣を抜くのもやむを得ないと。
へえ、と揶揄するようにハルは目をすがめシンを見る。
「俺とやりあうつもりか?」
厳しいその瞳に射すくめられ、シンはごくりと唾を飲み込んだ。
しらずしらず、手のひらが汗ばんでいることに気づく。
胸の鼓動が早鐘のように打ち、流れる血がかっと熱くなっていく。
勝てる相手ではないとわかっていながら、何故、俺は剣を抜こうとしている。
この子のために?
目の前の相手に完膚なきまでに打ちのめされ、生死の狭間をさまよったことを忘れたわけではないだろう?
たちこめる静寂に一陣の風が吹き、裏街のよどんだ空気を拡散する。
まるで時がとまってしまったかのように、微動だにせず、互いに相手の出方をうかがう二人の少年の間に危うい気配が張りつめた。しかし、その重苦しいほどに緊迫した空気を先に解いたのはハルであった。
サラの首にかけていた手を離し、くつりと笑う。
「あまりにもうるさいから、黙らせてやっただけだ。まさか、本気で俺が何かすると思ったのか?」
途端、サラは足下を崩し、力が抜けたようにぺたりとその場に座り込んでしまった。
ずっと自分が息をつめていたことにようやく気づいたのか、大きく息を吐き出す。
シンもゆっくりと緊張を解き、剣の柄から手を離す。
「二度と来るな」
それでもサラはいや、と首を振る。
「なら、はっきり言う。俺はあんたのことなど何とも思っていないし、一方的に気持ちを押しつけられても迷惑だ」
ぽろりと涙をこぼすサラを一瞥し、今度はシンに視線を向ける。
「そいつに変な気を起こすなよ」
「関心もない女を気にかけるとは、おまえにしては珍しいな」
「いちおう、恩人だからな。それだけだ」
それ以上、語ることはないというように、ハルは二度とこちらを振り返ることもなく去って行ってしまった。
咄嗟にシンの指先が腰の剣にかけられる。
場合によってはこの剣を抜くのもやむを得ないと。
へえ、と揶揄するようにハルは目をすがめシンを見る。
「俺とやりあうつもりか?」
厳しいその瞳に射すくめられ、シンはごくりと唾を飲み込んだ。
しらずしらず、手のひらが汗ばんでいることに気づく。
胸の鼓動が早鐘のように打ち、流れる血がかっと熱くなっていく。
勝てる相手ではないとわかっていながら、何故、俺は剣を抜こうとしている。
この子のために?
目の前の相手に完膚なきまでに打ちのめされ、生死の狭間をさまよったことを忘れたわけではないだろう?
たちこめる静寂に一陣の風が吹き、裏街のよどんだ空気を拡散する。
まるで時がとまってしまったかのように、微動だにせず、互いに相手の出方をうかがう二人の少年の間に危うい気配が張りつめた。しかし、その重苦しいほどに緊迫した空気を先に解いたのはハルであった。
サラの首にかけていた手を離し、くつりと笑う。
「あまりにもうるさいから、黙らせてやっただけだ。まさか、本気で俺が何かすると思ったのか?」
途端、サラは足下を崩し、力が抜けたようにぺたりとその場に座り込んでしまった。
ずっと自分が息をつめていたことにようやく気づいたのか、大きく息を吐き出す。
シンもゆっくりと緊張を解き、剣の柄から手を離す。
「二度と来るな」
それでもサラはいや、と首を振る。
「なら、はっきり言う。俺はあんたのことなど何とも思っていないし、一方的に気持ちを押しつけられても迷惑だ」
ぽろりと涙をこぼすサラを一瞥し、今度はシンに視線を向ける。
「そいつに変な気を起こすなよ」
「関心もない女を気にかけるとは、おまえにしては珍しいな」
「いちおう、恩人だからな。それだけだ」
それ以上、語ることはないというように、ハルは二度とこちらを振り返ることもなく去って行ってしまった。

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