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令嬢は元暗殺者に恋をする
第14章 裏街の頭
 街一番の名医と名高いベゼレートの診療所でのこの日の夕食はいつになく賑わい、盛り上がった。

 常ならば、ベゼレートとその養い子であり助手のテオ、ここ最近はサラも加わり、和やかな夕食をとるのだが、今日はもうひとり、サラが連れてきた客が夕食の席をともにしたからである。

 とにかく、その客がよく喋るのであった。

 おまけにその話がたいそう面白いらしく、サラは声を上げて笑い、師にいたっても例外ではなかった。

 おかげで、いつもならとっくに後片づけが終わっている時分であるにもかかわらず、食事はまだ終わる気配もない。

 そう、サラの連れてきた客──シンという少年と師が、酒を飲んでいたからである。

 普段、お酒など飲まない師が、この日はとても上機嫌に次々と酒瓶を空にしていくのであった。

 それどころか、すっかり師とシンは妙な具合に意気投合をしている。

 テオはちらりとサラが連れてきた少年を見やった。

 テオも一度は会ったことのある人物だ。

 以前、ハルがこの診療所を去っていこうとしたときに現れたその人、本人。

 それにしても、サラが彼をここへ連れてきたときには驚いたものであった。
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