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令嬢は元暗殺者に恋をする
第15章 星夜の語り
 俺も何をやってんだか……。

 客室に通されたシンは虚脱したようにがくりと肩を落とした。

 何だかひどく疲れたような気がする。
 それも精神的にだ。

 サラの言いなりでこの診療所へと連れてこられ、夕食まで馳走になり、さらに、もう遅いからと引きとめられ、結局、こうしてこの診療所に泊まる羽目となってしまった。

 時刻はすでに深夜。
 本来なら、酒場や町で知り合った女性と誘い誘われるまま肌を重ね、偽りの愛をささやく時分なのだが、どうやら今夜はそれもおあずけである。

 仕方がねえな。
 することもないし、寝るか。

 たまにはこんな日があってもいいだろうと無理矢理納得し、シンは上着に手をかけするりと脱ぎ落とした。
 あらわになった肩幅は思っていたよりも広くしなやかな逞しさ。
 鍛え込んだ身体だ。

 だが、驚いたのは、服を着ていては決してわからなかった彼の逞しさではなく、その広く滑らかな背中であった。

 首の後ろで緩く束ねられた濃い茶の、腰まである長い髪が揺れるその下には──。
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