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令嬢は元暗殺者に恋をする
第17章 あなたの瞳に私をうつして
「気が向いたらね」

「絶対よ! 絶対に来て! ハルが会いに来てくれるの、私、ずっとずっと待っているから」

 ハルはサラの危機を知らせてくれた少年の肩に手をかけ、口許にかすかな笑みを浮かべた。そして次に、その少年の側で腕を組んでいる男に視線を向けた。
 シンに裏街を頼まれたカイであった。

「あいつを何とかしてやれ」

 ハルはちらりとサラを振り返る。

「おまえに命令される筋合いはない」

 カイは鋭い目でハルを睨みつけた。

「いいのか? あの状態のままシンの元に帰してしまって」

 サラは引き裂かれた服の胸元を隠すように、羽織っていたハルの上着をかきあわせこちらを見ている。

「あいつのあんな姿を見たらシンが逆上するぞ。この裏街を血の海にするつもりか」

 ふっと笑い、ハルは裏街の男たちの間を抜け立ち去っていく。
 カイはちっと舌打ちをした。

 そこへ。

「カイさん、裏街の入り口でエレナさんが待ってますが……」

「エレナが? 何故エレナがここに」

「それが……あいつに」

 あいつと言って、男は振り返ることもなく去っていくハルの背中を見やる。

「エレナさんを呼んでこいと頼まれて」

「あいつ……そのためにエレナを……」

 カイは眉をしかめ、何ともいえない苦い笑いを浮かべた。
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