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令嬢は元暗殺者に恋をする
第19章 戸惑う気持ち
 サラを連れて部屋に戻ったシンは、小脇に抱えたサラを近くにあった椅子に座らせた。
 シンの怒気にあてられ、すっかりと怯えてしまったサラは、目に涙を浮かべ肩を震わせている。

「その手にしている上着は?」

 肩をすぼめ怯えるサラを目を半眼にして見下ろし、シンは低い声で問いかける。
 これは……と、サラは口ごもりながらうつむき、ハルの上着をぎゅっと抱きしめる。

「あんたのじゃないよな」

 サラのあごに人差し指を添え、くいっと上向かせる。

「顔をあげろ。俺の目を見て話せ」

「……突然現れた男の人たちに、短剣で脅されて」

 それで? とシンは目でサラの言葉の続きをうながす。
 どこまで知っているの? と探るような顔でサラが見つめてくる。

「隠さず全部話せ」

「男の人たちに……服を切り裂かれたの。でもハルが助けに来てくれて、上着を貸してくれた。服はエレナさんが。だから……」

「なるほど、それでエレナのところに行ったか。誰に入れ知恵されたか知らないが」

 サラの瞳が不安に揺れる。

「そういえば、この間、裏街でハルに言われていたな。ひどいめにあわされても懲りてないのかって。口で言ってもわからないのなら、ほんとに怖い思いをすれば二度とあんなところに行きたいと思わなくなるか。その男たちがやろうとした続きを、俺がやってやろうか? 裏街のやりかたで」

 シンは薄い笑いを口許に浮かべると、やにわに、サラの腕をつかんで立たせ、乱暴にベッドに転がした。
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