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令嬢は元暗殺者に恋をする
第2章 出会い
「テオ、よけいな詮索はおよしなさい」

 ベゼレートは静かに、けれど有無を言わせぬ強い口調でテオの思考を遮った。
 それでも、反論の意を示す養い子に、ベゼレートは手を制して押しとどめる。

「テオ、世の中には知ってはいけないことだってあるのですよ」

 決して踏み込んではいけない世界がある。

 その世界のいったんを垣間見ることすら許されないことも。

 いいですね、とベゼレートは釘をさしてテオをたしなめた。

 師のこんな厳しい表情は珍しい。

「先生は、何か知っているのですか?」

 テオの問いかけに、もはやベゼレートはそれ以上何も語ろうとはしなかった。

 ならばと、テオは質問を変えてみる。

「よろしいのですか? あの少年をこのままにしておいて」

「彼は怪我人ですよ。怪我人や病人を救うのが我々医師たる役目」

 違いますか、とベゼレートはいつもの穏やかな笑みでテオを見つめ返した。

 テオは言葉につまらせる。
 納得はいかなかったが、それでもうなずくしかなかった。
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