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令嬢は元暗殺者に恋をする
第21章 サラのお願い
「恥ずかしがって可愛い」

 困った様子でうつむくサラの背後から、素肌のまま、ぎゅっと抱きついた。

「いやーっ!」

 次の瞬間サラの容赦ないひじ鉄がシンのみぞおちを襲う。

「うぐ……っ」

 シンは呻いて腹を押さえ、床にうずくまる。
 起き抜けの空きっ腹に、今の一撃はかなり効いた。

「お昼過ぎには迎えの馬車が来てしまうわ。あなたを屋敷に連れて行くには、迎えが来る前に戻らなければいけないの。だから、早く支度をしてちょうだい!」

 憤慨もあらわに大声を上げ、走り去るように部屋から出ていってしまった。
 扉が凄まじい音をたてて乱暴に閉まる。
 どうやら、その夜会とやらにシンを本気で連れていこうとしているらしい。

 シンは長いため息を吐きだした。
 いっそうのこと、本当に逃げ出してしまおうかな……と。
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