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令嬢は元暗殺者に恋をする
第22章 夜会へ
 夜会用の衣装に身を整えたシンの姿を見て、サラは満足げにうなずいた。

 深い緑の生地に黒と金の刺繍で縁取った膝まである丈の長いコート。深く折り返した袖は黒貂。
 コートの下は黒いズボンにブーツ。
 長い髪はやはり首の後ろ一つで束ねられ、黒いリボンでまとめた。

 サラも、今日この日ばかりは見違えるように可愛らしかった。
 白く滑らかな肩と胸元が人目を惹きつける白のドレス。
 胸元、腰、裾に水色の小花とリボンを飾った衣装。袖ぐりにも水色のレースを惜しげもなくあしらわれている。

 緩やかに波打つ鳶色の髪にも水色のリボンを器用に編み込んで、ところどころに小花を飾っている。

「ずいぶんと衣装でかわるのね。どこから見ても立派な貴公子に見えるわ」

「まあ実際、俺は何を着ても似合っちゃうからね」

 鏡の前で姿勢を作り、シンもまんざらではない様子である。

 最初はこんな重そうな服など着たくない、嫌だとごねていたシンであったが、実際に来てみると思いの他気に入ったのかこの調子だ。
 それどころか、楽しそうに見えるのは気のせいか。

 呆れながらサラは肩をすくめた。
 とはいえ、違和感がないのは事実であった。
 元々の見栄えがいいというせいもあるのだろう。
 顔立ち、背の高さ、均整のとれた身体つき、どれをとってもシンの容貌は魅力的だった。

「ほんと、とてもよく似合っているわ。素敵よ」

「もしかして、惚れた?」

 言ってシンはサラの頬に手を添えた。

「そういうサラも可愛いよ」

 ささやくシンの声にサラはかっと頬を赤く染める。
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