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令嬢は元暗殺者に恋をする
第23章 抱きたい
会場から流れる優雅な楽曲が、二人の間に落ちた沈黙を彩る。
手を伸ばせば届きそうな星たちが、その音楽にあわせて瞬いているようだ。
さわりと風が吹き抜けていく。
バルコニーの向こうに広がる薔薇園から、風にのってふわりと甘い香りを漂わせ二人を優しく包み込む。
サラはにこりと微笑んだ。
「ねえ、私もっと星の物語が聞きたいな」
「お望みとあれば夜空を描く星座、全天八十八の物語を全て聞かせてあげるよ。少しは退屈しのぎになるかな」
サラは目を瞠らせた。
「全部知っているの? 八十八もあるの? すごいわ。じゃあ、あの星にも物語があるの?」
サラは夜空の一点、蒼白く瞬く星を指さした。
「天白星の西側、波形にうねった星の群れがあるだろう? あれが黒龍座(こくりゆうざ)。黒龍座は、地上に災厄をもたらした悪い龍が天帝によって天に封印されたんだ。そして、その黒龍を常に監視するのが、サラが言った蒼い星、天慈星(てんじせい)。若き弓の名手だった男が星になったもの。その男は生前大きな過ちを犯し、それを悔いて自ら命を断ってしまった」
「あやまち?」
「男には恋人がいたんだ。でも、その恋人を他の男に奪われてしまった。嘆いたその男は愛する女性を取り戻すため、相手の男に向けて自慢の弓を引いた。しかし、放たれた矢は憎い相手ではなく恋人の胸を貫いてしまった」
「弓の名手なのに?」
「そう、だから過ちなんだ。弓の名手と謳われた男の奢りが、結果、最愛の女性(ひと)を失う羽目となってしまった。男は心を痛め、愛する者の後を追い、自らも命を断った。さまよう男の魂を哀れんだ天帝が、天に封じた悪しき龍を監視するという条件で、男を天へと導いた。その時、天帝は男に弓を与えたんだ。それは、どんなに堅い龍の鱗も貫くほどの特別な威力を持つ弓。その弓はいつでも龍の心臓を狙っている」
手を伸ばせば届きそうな星たちが、その音楽にあわせて瞬いているようだ。
さわりと風が吹き抜けていく。
バルコニーの向こうに広がる薔薇園から、風にのってふわりと甘い香りを漂わせ二人を優しく包み込む。
サラはにこりと微笑んだ。
「ねえ、私もっと星の物語が聞きたいな」
「お望みとあれば夜空を描く星座、全天八十八の物語を全て聞かせてあげるよ。少しは退屈しのぎになるかな」
サラは目を瞠らせた。
「全部知っているの? 八十八もあるの? すごいわ。じゃあ、あの星にも物語があるの?」
サラは夜空の一点、蒼白く瞬く星を指さした。
「天白星の西側、波形にうねった星の群れがあるだろう? あれが黒龍座(こくりゆうざ)。黒龍座は、地上に災厄をもたらした悪い龍が天帝によって天に封印されたんだ。そして、その黒龍を常に監視するのが、サラが言った蒼い星、天慈星(てんじせい)。若き弓の名手だった男が星になったもの。その男は生前大きな過ちを犯し、それを悔いて自ら命を断ってしまった」
「あやまち?」
「男には恋人がいたんだ。でも、その恋人を他の男に奪われてしまった。嘆いたその男は愛する女性を取り戻すため、相手の男に向けて自慢の弓を引いた。しかし、放たれた矢は憎い相手ではなく恋人の胸を貫いてしまった」
「弓の名手なのに?」
「そう、だから過ちなんだ。弓の名手と謳われた男の奢りが、結果、最愛の女性(ひと)を失う羽目となってしまった。男は心を痛め、愛する者の後を追い、自らも命を断った。さまよう男の魂を哀れんだ天帝が、天に封じた悪しき龍を監視するという条件で、男を天へと導いた。その時、天帝は男に弓を与えたんだ。それは、どんなに堅い龍の鱗も貫くほどの特別な威力を持つ弓。その弓はいつでも龍の心臓を狙っている」

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