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令嬢は元暗殺者に恋をする
第26章 勝負の火酒
 かしゃんと、耳障りな音が部屋に響きわたる。
 祖母は孫娘の不行儀さに、わずかに目を細めただけであった。

「いくらなんでも早すぎます!」

「サラはまだ……」

 ミストスとフェリアも同時に声を上げた。

「私がこの家に嫁いだのも、あの子と同じ年の頃です」

 彼女にとって孫娘など、このトランティア家のたんなる道具にしか過ぎない。そして、誰も祖母の意見に逆らうことなどできない。

「これはすでに決定したこと。あなたたちもそのつもりでいるように」

 そう告げる祖母の石灰色の瞳には何の感情も表れてはいなかった。
 サラは唇を引き結び、勢いよく椅子から立ち上がった。
 祖母の冷たい眼差しがサラを見据え、次にサラの母、フェリアを一瞥する。

「おまえたちの二の舞を踏むわけにはいかないのですよ」

 冷たい一言がその場の空気を震わせた。
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