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令嬢は元暗殺者に恋をする
第28章 それぞれの思い1 ※
「許して……お願い」

「もう降参? そのわりには俺のものをきつく咥え込んで、離したくないっていってるよ。あんたのここ」

 誘ってきたのはそっちだといわんばかりに、ハルは荒々しく責め立て女を敗北の底へと突き落としていく。

「やめて……いや! ほんとに壊れちゃう……っ」

 逃げようとする女の腰を掴んで引き寄せ、ハルは己のものをぎりぎりまで引き抜き、一気に貫いた。

「……ああっ、く……っ」

 貫かれる鋭さと重たさに、女の目の縁に涙が浮かぶ。
 意識を手放し倒れてしまえばどんなに楽になれるだろうか。だが、ゆるゆると身体の芯に結び始めた快楽がそうはさせてくれなかった。

 もう無理だと泣いて懇願するたびに、朦朧としていく意識を呼び起こされ、昇りつめさせられてしまうのだ。
 何度も何度も。

「だめ! また、いく、いく、イっちゃう……っ!」

「いけるなら、まだ大丈夫だね」

「いや! もう何回イったかわからない……」

「覚えてないの? 教えてやろうか?」

「いや、こんなの知らないっ!」

「何度もイかせてくれる男なんて、そう滅多にいないだろう?」

「だめ、おかしくなっちゃう……っ!」

 とうとう、女のまなじりから涙がこぼれ落ちた。

「ああ……あぁぁぁぁ──────っ!」

 女の身体に火が灯り、燃え上がる。
 絶頂へと意識を飛ばした女の悲鳴が、路地裏に反響した。




 空虚な心を偽りの欲望にすり替え、我も忘れて激しく乱れ狂う。
 抱いた花を引き裂くほどに散らし、一時の快楽をただひたすら貪り続けた。それでも、埋め尽くせない激情と鎮めることのできない心。



 俺は何を苛立っている。
 何をこんなに感情的になっている。
 最低だな。
 俺は……。
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