この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第30章 私はハルだけのもの
「私はハルだけのものよ。だから、私のことも好きになって。私ももっとたくさんハルのことを知りたい」

 ハルの背に腕を回し、その胸に顔を埋めようとしたその時であった。
 部屋の扉を叩く音にサラは肩を跳ねた。

「サラ様? どうかされたのですか?」

 侍女の呼びかける声にうろたえる。

「な、何でもないの!」

 扉に向かってサラは答え、離れていこうとするハルに待って、とすがりつく。

「また会いに来てくれる。明日もまた」

 けれど、しがみついた腕を無言で解かれ、サラは切ない表情を浮かべる。

 バルコニーの手すりに手をかけたハルは、一度だけ肩越しに振り返りふっと笑う。そして、軽々と手すりを飛び越え、足音をたてることもなく夜の闇に消えてしまった。

「待って! ここ二階……」

 慌てて手すりから身を乗り出して眼下を見下ろすが、ハルの姿はとうに闇にまぎれて見あたらない。と、同時に部屋の扉が開かれた。
 現れた侍女が燭台を手に、眠たそうに目をこすって部屋に入ってくる。

「話し声が聞こえたようですけど」

「ひ、独り言よ」

「でも、男性の声が」

「気のせいよ。こんな夜更けにあり得ないでしょう? それも男の人の声だなんて。ね?」

 サラはにこりと笑ってみせる。
 侍女は首を傾げ部屋の中をぐるりと見渡した。けれど、誰の姿もないことを確認すると再びサラに視線を戻す。

「早くお休みになってくださいね。それとあまり夜風にあたってはお風邪を召しますわ」

「そうね。ちょっと、寝つけなくて……でも、もう眠るわ。気にかけてくれてありがとう」

 侍女は頭を下げ部屋を退出した。
 サラはふうと息を吐きだす。

 危なかったわ。

 緊張したせいで変な汗をかいてしまった。
 もう一度ハルの姿を見つけ出そうとバルコニーの下に視線をさまよわせたが、やはり見つけ出すことはできなかった。

 シン、ありがとう。
 ハルが会いに来てくれたよ。
 突然来て、言いたいこと言って、すぐ帰ってしまったけれど。
 でも、ハルが私に会いに来てくれた。
 また明日も来てくれるかな。
/835ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ