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令嬢は元暗殺者に恋をする
第32章 甘いひとときを過ごすはずだったのに
でも、こうして会いに来てくれたし、お勉強もみてくれる。
物覚えの悪い私に、文句を言いながらも何度も説明してくれた。
本当はとても優しい人。
やっぱり、私ハルのことが好きだわ。
もっと、ハルのことを知りたいな。
「ハルって頭がいいのね。それに何でもできるし、ほんとうにすごいわ。やっぱり私のハルだわ!」
「誰の何だって?」
「私のハルって言ったのよ」
「いつからあんたの俺になったんだよ」
「初めて出会った時からよ!」
ハルはやれやれと肩をすくめる。
サラは膝をついたままつつっとハルとの距離を縮める。
「ねえ、さっきの笛とても素敵だったわ。もう一回聞きたいな」
「今度ね」
「今、聞きたいな」
「今やるべきことは何だ? 明日までに仕上げなければならないんだろ。だったら早くそれを終わらせろ」
それと言って、ハルはサラの手にした宿題を一瞥する。
サラはしょんぼりとうなだれたが、すぐにぱっと顔を上げた。
「私思ったの。もしかしてハルはレザン・パリューのどこかの国の王子様で、幼い頃から英才教育を受けていて、それで今は見聞を広めるという名目で庶民に身を扮して各国を放浪しているとか? それともどこかの諜報員で、このアルガリタに潜入して何かとてつもない情報を得ようとしているとか?」
「とてつもないのは、あんたの想像力だ」
ハルは肩をすくめ鼻白む。
「だって、異国の言葉を流暢に喋ることじたい、私には信じられないもの。ほんと謎ばかり」
謎ね……と、つぶやきハルは視線を斜めにそらした。
まぶたを落とした端整な顔に、苦いものがゆるゆると浮かび上がる。
「そうだな……確かにある意味、一種の英才教育だったかもしれないな……」
ぽつりと呟くハルの言葉にサラは目を見開いた。
物覚えの悪い私に、文句を言いながらも何度も説明してくれた。
本当はとても優しい人。
やっぱり、私ハルのことが好きだわ。
もっと、ハルのことを知りたいな。
「ハルって頭がいいのね。それに何でもできるし、ほんとうにすごいわ。やっぱり私のハルだわ!」
「誰の何だって?」
「私のハルって言ったのよ」
「いつからあんたの俺になったんだよ」
「初めて出会った時からよ!」
ハルはやれやれと肩をすくめる。
サラは膝をついたままつつっとハルとの距離を縮める。
「ねえ、さっきの笛とても素敵だったわ。もう一回聞きたいな」
「今度ね」
「今、聞きたいな」
「今やるべきことは何だ? 明日までに仕上げなければならないんだろ。だったら早くそれを終わらせろ」
それと言って、ハルはサラの手にした宿題を一瞥する。
サラはしょんぼりとうなだれたが、すぐにぱっと顔を上げた。
「私思ったの。もしかしてハルはレザン・パリューのどこかの国の王子様で、幼い頃から英才教育を受けていて、それで今は見聞を広めるという名目で庶民に身を扮して各国を放浪しているとか? それともどこかの諜報員で、このアルガリタに潜入して何かとてつもない情報を得ようとしているとか?」
「とてつもないのは、あんたの想像力だ」
ハルは肩をすくめ鼻白む。
「だって、異国の言葉を流暢に喋ることじたい、私には信じられないもの。ほんと謎ばかり」
謎ね……と、つぶやきハルは視線を斜めにそらした。
まぶたを落とした端整な顔に、苦いものがゆるゆると浮かび上がる。
「そうだな……確かにある意味、一種の英才教育だったかもしれないな……」
ぽつりと呟くハルの言葉にサラは目を見開いた。

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