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令嬢は元暗殺者に恋をする
第32章 甘いひとときを過ごすはずだったのに
「集中力が続かないんだね。最後の二問が違う。あれだけ注意しても、まだつまらない間違いをするのか?」
「え? ちょっと待って! どうして答えだけ聞いて、合ってるのか間違ってるかがわかるの」
「問題なんて一度目を通せば覚えるだろ。違うのか?」
サラの憤りには意に帰さず、ハルはこともなげに言ってのけた。
そのくらい当たり前ではないのか、と言わんばかりの口調だ。
唖然としてサラは口を開け次に、まさかと手にしていた宿題に視線を落とす。
「問題覚えてしまったの? この用紙丸ごと? それで、頭の中でこんな複雑な計算式ができてしまうわけ? ハルの頭の中身って……」
どうなってるの? 信じられないと、サラは緩く首を振った。
ここまでくると、もはや根本的に頭の出来が違うのだとサラは改めて認識する。
世の中何でも完璧にこなしてしまう人間が実際にいるのだと。
「こんな簡単なことも理解できないあんたの方が、俺には信じられないけどね」
「で、でもね。私だって少しはましになったと思うのよ。何か自分がもの凄く賢くなった気分だもの」
「気分だけね」
間髪いれずにハルが憎らしい言葉で切り返す。
一瞬、サラは怒ったように頬を膨らませるが、すぐに気を取り直す。棘だらけの相手の言動にいちいち腹をたてて突っかかっていったら、こちらの精神がもたない。
そもそもハルはこういう人なのだ。しかし、サラはにこりと笑った。
「え? ちょっと待って! どうして答えだけ聞いて、合ってるのか間違ってるかがわかるの」
「問題なんて一度目を通せば覚えるだろ。違うのか?」
サラの憤りには意に帰さず、ハルはこともなげに言ってのけた。
そのくらい当たり前ではないのか、と言わんばかりの口調だ。
唖然としてサラは口を開け次に、まさかと手にしていた宿題に視線を落とす。
「問題覚えてしまったの? この用紙丸ごと? それで、頭の中でこんな複雑な計算式ができてしまうわけ? ハルの頭の中身って……」
どうなってるの? 信じられないと、サラは緩く首を振った。
ここまでくると、もはや根本的に頭の出来が違うのだとサラは改めて認識する。
世の中何でも完璧にこなしてしまう人間が実際にいるのだと。
「こんな簡単なことも理解できないあんたの方が、俺には信じられないけどね」
「で、でもね。私だって少しはましになったと思うのよ。何か自分がもの凄く賢くなった気分だもの」
「気分だけね」
間髪いれずにハルが憎らしい言葉で切り返す。
一瞬、サラは怒ったように頬を膨らませるが、すぐに気を取り直す。棘だらけの相手の言動にいちいち腹をたてて突っかかっていったら、こちらの精神がもたない。
そもそもハルはこういう人なのだ。しかし、サラはにこりと笑った。

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