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令嬢は元暗殺者に恋をする
第34章 勘違い ※
 視線を落としたハルはやれやれといった表情でため息をつく。
 サラの唇から寝息が聞こえ始めたからである。

 ためらった後、サラの身体を軽々と両腕にかかえ、安らかな眠りを妨げないよう、そっとベッドの上へ横たえさせる。
 まるで壊れ物を扱う丁寧さであった。

 一気に深い眠りに落ちていってしまったのか、目覚める気配はない。
 穏やかな寝息が薄紅色の唇から規則正しくもれる。
 机の上の燭台の蠟燭がつきかけ、じっと音をたてて消えた。

 たちまち辺りを包む暗闇に、ただひとり取り残されハルは立ちつくす。
 安らかに眠るサラの顔を、静かな眼差しで見下ろした。

 頬にかかる髪を払いのけようと手を伸ばしかけた時、うんと声をあげて小さな身体が寝返りをうつ。
 その拍子に、枕元に置いてあった白いうさぎのぬいぐるみが床へと落ちた。

 安らかな寝顔を見つめるハルの表情に滲んだのは穏やかな微笑ではなく、その端整な顔に浮かぶのは、煩悶に彩られた深い翳り。そして、憂いに沈む瞳。
 伸ばしかけた手を強く握り、ハルは小刻みに肩を震わせた。

 首をうなだれて立ちつくすハルに、漆黒の闇がまとわりつく。
 深遠の闇は腕を広げ、解けない鎖となってゆるりと彼を束縛していった。
 まるで、彼を手離しはしないというかのように。
 あるいは、光に焦がれようとする彼に嫉妬するかのように。

 夜の口づけにその身を委ね、ハルは空虚で乾いた笑いを口の端にのぼらせた。闇が深ければ光は押し潰され、光が闇以上に満たされれば闇はその存在を失ってしまう。

「光と闇は決して相容れることはない」

 ふっと肩の力を抜き、まぶたを落とす。
 しばしの間、あどけないサラの寝顔を見つめ、床に落ちたうさぎのぬいぐるみを拾い、枕元へと置く。

 サラの頬に手をあて、ハルはそっとその滑らかな頬に口づけをしようとして、思いとどまる。
 その顔に浮かぶのは苦い表情であった。
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