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令嬢は元暗殺者に恋をする
第35章 遠い地、レザン・パリュー
サラの家庭教師マイネラー氏は、アルガリタの学問所を卒業した、将来は数学者を志す人物であった。
彼は週に何度かトランティア家へと訪れてはサラに勉強を教え、それ以外の時間は常に学問所の研究室で数学の魔力に憑りつかれたように研究に没頭する毎日を送っていた。
年齢的には二十歳後半。ひょろりとした背格好に、どこか病的さを感じさせる蒼白い顔。
その顔はいつも気難しそうに眉間にしわを寄せていた。
黒縁の眼鏡をかけ、それでも眼鏡の度が合わないのかしょっちゅう目を細めていた。
だが、今日ばかりはそんな彼の難しい顔に、あきらかな動揺が浮かんでいた。
「本当に宿題をやってきたというのですか?」
信じられないという口調で家庭教師はサラを見つめ、そして今度は窓の外遠い空を見上げた。
雨が降るとでも言いたいのだろうか。けれど、彼がそう思ってしまうのも無理はない。
かつてサラがまともに宿題をやってきたことは一度たりともなかったのだから。
たとえ、宿題をやってきたとしても答えはほとんど間違いだらけ。
あるいは、全問不正解ということも珍しくはない。
教師はそれでもやはり信じられないという面持ちで、宿題の用紙に目を通し始める。
そんなマイネラー氏の目が徐々に大きく見開かれていく。
彼は週に何度かトランティア家へと訪れてはサラに勉強を教え、それ以外の時間は常に学問所の研究室で数学の魔力に憑りつかれたように研究に没頭する毎日を送っていた。
年齢的には二十歳後半。ひょろりとした背格好に、どこか病的さを感じさせる蒼白い顔。
その顔はいつも気難しそうに眉間にしわを寄せていた。
黒縁の眼鏡をかけ、それでも眼鏡の度が合わないのかしょっちゅう目を細めていた。
だが、今日ばかりはそんな彼の難しい顔に、あきらかな動揺が浮かんでいた。
「本当に宿題をやってきたというのですか?」
信じられないという口調で家庭教師はサラを見つめ、そして今度は窓の外遠い空を見上げた。
雨が降るとでも言いたいのだろうか。けれど、彼がそう思ってしまうのも無理はない。
かつてサラがまともに宿題をやってきたことは一度たりともなかったのだから。
たとえ、宿題をやってきたとしても答えはほとんど間違いだらけ。
あるいは、全問不正解ということも珍しくはない。
教師はそれでもやはり信じられないという面持ちで、宿題の用紙に目を通し始める。
そんなマイネラー氏の目が徐々に大きく見開かれていく。

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