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令嬢は元暗殺者に恋をする
第35章 遠い地、レザン・パリュー
「それも、全問正解……そんな」

 馬鹿な、あり得ない、何かの間違いだ、と言いかけてはっと我に返り、マイネラー氏は慌てて首を振り、ああ……いや……その…と、言葉をにごした。

「解き方を教えてもらったの」

 サラは得意げな顔で、にっこりと笑いマイネラー先生を見上げた。

 これもみんなハルのおかげだわ。

 上機嫌の笑みを浮かべたまま、サラは文机に頬杖をつき、昨夜のことを思い出す。
 昨夜は思いもかけずまたハルがまた会いに来てくれ、お勉強を教えてくれたのだ。けれど結局、最後は睡魔に抗うことができず途中で眠ってしまったのだが、朝になって目を覚まして飛び起きると、当然のことながらハルの姿はなく、その代わり彼が宿題の用紙の余白に問題の解き方の解説を、もちろん、アルガリタ語で残していってくれたのだ。

 やっぱり、ハルは優しいわ。
 それに、とても面倒見のいい人。

 胸をきゅんとさせ、用紙の余白に書き込まれたハルのきれいな文字をサラはうっとりとした目で眺めていた。

「おお! この余白に書き込まれた見事なまでにわかりやすい解説!」

 突然教師が声をあげるものだから、サラは驚いて肩を跳ね上げた。そんなサラなど気にもとめず、マイネラー先生は続けて言う。

「サラ様、いったいどなたにこれを? 学問所の方ですか?」

 用紙を手にしていたマイネラー先生の手がかすかに震えていた。
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