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令嬢は元暗殺者に恋をする
第36章 知りたい
『あまりレザンに関心を持つのはおやめになったほうがよろしいかと思われます』

 マイネラー先生のその言葉をサラは思い出す。

 今から三年前、当時十四、五歳のレザンの少年。
 それがハルの姿と重なってしまった。

 そして、学問所に行ったことがある? という問いかけに、何故、そんなことを聞く? と反対にハルは聞き返してきた。
 行ったことがないのなら、はっきりないとそう言えばいい。
 なのに、否定しなかった。

 もし、先生の言っていたその少年がハルだったら。
 レザンの秘密を知ろうとした学問所の人たちを殺害したのがハルだったら。

 レザンの危険な組織……。
 どんな組織かわからないけど、ハルがその組織の人間だったら。

 私……自分が思っていた以上に危険な何かに踏み込みかけようとしていることになる。
 いいえ、もう踏み込んでしまっているのかも。

 にわかに心臓の鼓動が速まるのを覚えた。
 ハルの腕にしがみついていた手が震えていたことに気づく。
 怯えいているのを悟られまいとして、それを隠すようにさらにぎゅっと腕にすがりつく。

 ううん、私どうしてハルだと決めつけてしまっているの。
 まだそうだと決まったわけではないのに。

 物思いにふけるサラの隣、わずかにまぶたを落とすハルの表情に、暗いものが過ぎっていたことにサラは気づいていなかった。

 肩に回されたハルの手の指先にきつく力が入ったことに気づき、サラは落ちかけた思考の底から浮き上がり我に返る。

「そう、それでね。私いつかハルの故郷に行ってみたいなって思ったの。だからね、だから……私にハルの国の言葉を教えて。ああ!」

 待って、と慌ててつけ加えながら、サラはハルの口許に手をあてた。
 ハルのことだから、きっといやだ、と素っ気なく切り返してくると思ったからだ。
 ハルの口に添えた手が握りしめられそっと取り除かれる。

「……ハル?」

「(もう、あの場所には戻ることはできない。レザンの地を再び踏むということは、己の死を意味することだから)」

 ハルは呟くように異国の言葉を口にする。
 意味を知らないサラは、わあー、と感激の声を上げ目を輝かせた。
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