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令嬢は元暗殺者に恋をする
第37章 それでも、あなたが好き
「私……本当にただハルの故郷のことが知りたい、レザンの言葉を覚えたいと思っただけ……本当にそれだけなの。ハルのことを知りたいという気持ちはあるけど、だけどこっそり探ろうとかそんなつもりはなかった」

「わかってるよ。あんたはこそこそ俺のことを調べるようなことはしない。聞きたいことがあるなら、いずれはっきり俺に聞いてくるはず。三年前のことにしても、まさかそんなことを聞かされるとは想像もしていなかったから、あんたは戸惑っている」

「先生は……詳しいことは知らないって言ってた……先生はどうなるの?」

 サラはおそるおそる問いかける。

 殺されてしまうの?
 ハルに人殺しなどさせたくないのに。
 私のせいだわ……。

「どうもならないよ」

 わずかに眉間にしわを寄せ、静かにまぶたを落とすハルの端整な顔に苦悶の色がにじむ。

「詳しいことを知っている者はあの学問所にはもういない。本当に知られて困ることはすべて消した。秘密を知った者も全員、この手で」

 始末した、と呟くように答えるハルの言葉に心臓が止まってしまうのではないかと思った。

 それって……。

「まさか、こんなに早く知られてしまうと思いもしなかった」

「三年前に学問所で起きたこと。ハルは……その時の少年なのね?」

 もはや確かめる必要もないだろう。
 だけど、聞かずにはいられなかった。

 次のハルの返答次第で覚悟を決めなければならないと思った。そして、自分がハルにとってどういう存在となるか。

 ハルは自分にすべてを語ってくれるだろうか。
 長い沈黙の後、ようやくハルは口を開いた。

「俺もこれを聞くのは最後にするよ。考える隙は与えない。もし、あんたに少しでも迷いが見られたら、俺はもうあんたとは二度と会わない」

「私のことを試そうとするのね! いいわ、いくらでもハルが納得するまで試せばいい。それでもハルを好きだという私の気持ちは変わらない!」

「違うんだ。最悪のことを考えて……」

「ハルの好きだった女性と私を重ねてしまったのね。私が殺されるかもしれないと思って。でも、私は死んだりしない! ハルの側から離れたりしない! 私にとって最悪なのは、ハルが私の前からいなくなってしまうことだもの」

「サラ……」
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