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令嬢は元暗殺者に恋をする
第41章 名前を呼んで
「むやみに剣を振り回せば怪我をするどころではすまない。それに、あんたに人を傷つけるような真似はさせたくない。だから……」

 と言って、握りしめていた剣をハルの手によって首筋に持っていかれる。

「えっと、これって……私はどうすればいいの?」

「脅しだ」

 脅し……?

 しかし、よもやハルの教わったこの方法が、後に役立つことになろうとは、この時のサラには欠片ほどにも思いもしなかったであろう。

「これ以上近づいたら死んでやるわって、叫ぶのね」

「こうすればたいていの相手は怯む」

 緊張した面持ちでサラはこくりと喉を鳴らしてうなずいた。と同時に、お腹まで派手にぐうと鳴った。

「……」

「……」

「や、やだ! すごい恥ずかしい……そういえば私、お昼ご飯まだだったかも。朝も少ししか食べてないし」

 少しどころか、しっかり食べたけど。

 慌ててお腹を押さえ、サラは咄嗟にいいわけがましく言う。

「今日は予定はないって言っていたね」

「そうよ。だから、ずっとハルと一緒にいられるの」

 うう……でもお腹が空いてきたかも。さっき、たくさん動いたからだわ。こんなことなら、おやつでも用意してくればよかった。
 どうしよう、またお腹が鳴ってしまいそう。

「町に行かないか?」

「町に? ハルと一緒に?」

「俺以外の誰といくつもり?」

 サラは目を大きく見開き、瞳を輝かせた。
 まさか、ハルから町に行こうと誘ってくれるなんて嬉しすぎるわ。

「俺もお腹が空いた」

「もしかして、ハルと一緒にご飯が食べられるの? 行く! 行きたい。ハルと町を歩いてみたい!」
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