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令嬢は元暗殺者に恋をする
第49章 篠つく雨の……※
 ベッドに座るサラの頬に手を添え、ハルの唇が、髪にひたいに、まぶたに頬にと優しく触れるようにキスを落とす。
 唇を離してサラの反応を確かめるように、ハルがのぞき込んでくる。
 震えを抑え込もうときつく握りしめていた手をとられ、指先に口づけされる。

「緊張してる?」

 少し……と声にならない声を落とし、サラはうつむいたまま小さくうなずいた。
 これからハルに抱かれるのだと考えただけで、不安と胸の高鳴りが交互に押し寄せ、息苦しいくらい心臓がとくとくと音をたてている。

 ハルはどんなふうに私を愛してくれるのだろう。
 そう思うと、お腹のあたりがきゅっとせつなく疼き、身体が震えた。
 ハルの目をまともに直視することができない。

「私、どうしたらいいのか、わからない」

「どうもしなくてもいいよ。自然にしていればいい」

 うん、とうなずいたものの、それでもどうしたらいいのかわからなかった。
 もはや、ただハルに身を任せるしかなかった。

「怖がらないで」

 そう言って、ハルの手が伸びてきた。
 慈しむように、いたわるように、安心させるように、優しくハルの手が何度も髪をなでてくれる。

 温かい手。

 ハルと出会った最初の頃、強引に押し倒された時のようにもっと、容赦なく身体を開かされるのかと、覚悟はしていた。
 なのに、ハルの手も声も言葉も何もかも思っていた以上に優しくて、時間をかけて緊張している自分の身体を解きほぐそうとしているのがわかった。
 それだけで、涙がでそうになった。

 ずっとうつむいていたあごにハルの手が差し込まれ上を向かされる。
 ハルの唇がひたいに目元に、頬に、耳に落ち、最後に唇に重ねられた。
 ついばむような優しいキス。
 ずっと緊張でつめていた息をゆっくりと細く吐き出す。
 強ばっていた肩がさがり、徐々に身体の力が抜けていくのが自分でもわかった。そして、それはハルにも伝わったようだ。
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