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令嬢は元暗殺者に恋をする
第5章 行かないで ※
 それから、サラのかいがいしくも迷惑な看病は毎日、それこそ朝から晩まで続いた。

 ハルもこの診療所から突然、姿を消してしまうのではないかと恐れたが、それもなく、意外にもおとなしくしてくれた。

「傷もだいぶよくなったって先生が言ってたわ。よかったね」

 サラの看病云々は置いておくにしても、確かにハルの怪我の具合はほとんど快復したといってもいい状態になった。

 これなら、もう歩き回っても差し支えはないであろう。

 ハルはベッドから起き上がり、寝間着を脱ぎ捨てると、かたわらに置いてあった清潔なシャツに手を伸ばす。

 サラは息を飲んだ。

 窓から差し込む陽の光が筋肉質なハルの身体に陰影をつくる。

 細身だが、筋の浮き上がった腕はしなやかな逞しさ。
 首筋から肩にかけての線も滑らかだけれど脆弱さはない。まるで、ため息のでる強靱な美しさ。

 きれいな身体……。

 思わず見とれてしまったことに気づき、サラは頬を朱に染め慌てて視線を自分の足下に固定する。

「まさか、もう出て行くなんて言わないよね。すぐに動いたら、また身体を悪くするのよ」

 寂しげに声を落とすサラをハルはかえりみる。

「あいにく、少しばかり動かなかったくらいで衰えてしまうような鍛え方はしていない」

「でも……」

 サラはスカートの裾をぎゅっと握りしめた。
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