この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第50章 目覚めて
「ハル……」
町の喧噪はここまで届かない。
ゆっくりと世界が静かな闇に閉ざされゆこうとする中、もの悲しさを漂わせる笛の音色が遠くの空へ緩やかにのぼり、吸い込まれる溶けていく。
サラは目を閉じて、じっとハルが吹く笛の音に耳を傾けていた。
しらずしらず目の縁に涙が盛り上がり、曲げた人差し指を目元にあてこすった。
ここで、こんな場面で笛を吹いてくれるなんて、ずるすぎるわ。
だって、感動して涙がこぼれそう……。
笛の音が終わると同時に、山の向こうに顔をのぞかせていた夕陽がすっかりとその姿を消してしまった。
夕闇に染まり始める空に星がまたたき始める。
ハルに背を向けたままサラはその場に立ち尽くした。
唇を噛みしめ涙をこらえるように震わせるサラの背に、ハルがふわりと腕を回し抱きしめた。
丘の下から吹き上げる風にサラの衣服の裾が、髪があおられる。
「少し風が冷たくなってきたね。帰ろうか」
吹く風から守るように、ハルの腕が肩に回された。
どこか名残惜しい気持ちでサラはうなずき、ぴたりとハルに身を寄り添えた。
町の喧噪はここまで届かない。
ゆっくりと世界が静かな闇に閉ざされゆこうとする中、もの悲しさを漂わせる笛の音色が遠くの空へ緩やかにのぼり、吸い込まれる溶けていく。
サラは目を閉じて、じっとハルが吹く笛の音に耳を傾けていた。
しらずしらず目の縁に涙が盛り上がり、曲げた人差し指を目元にあてこすった。
ここで、こんな場面で笛を吹いてくれるなんて、ずるすぎるわ。
だって、感動して涙がこぼれそう……。
笛の音が終わると同時に、山の向こうに顔をのぞかせていた夕陽がすっかりとその姿を消してしまった。
夕闇に染まり始める空に星がまたたき始める。
ハルに背を向けたままサラはその場に立ち尽くした。
唇を噛みしめ涙をこらえるように震わせるサラの背に、ハルがふわりと腕を回し抱きしめた。
丘の下から吹き上げる風にサラの衣服の裾が、髪があおられる。
「少し風が冷たくなってきたね。帰ろうか」
吹く風から守るように、ハルの腕が肩に回された。
どこか名残惜しい気持ちでサラはうなずき、ぴたりとハルに身を寄り添えた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


