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令嬢は元暗殺者に恋をする
第53章 胸騒ぎ
 裏街のシンはどういうわけだかすっかり不抜けてしまった、今なら倒せるかもしれない。

 という噂をここ数日ちらほら耳にすることもあったが、それで、誰かが何かを仕掛けてくることもなく、いたって穏やかな毎日だ。
 何やらやけ気味に答えるシンに、それもどうかと思うが、と眉をしかめてぽつりとカイは呟く。

「なら、しばらくそのままおとなしくしていてくれ」

「何だ? 何か俺の身によくないことでも起きるとでも言いたげだな」

 カイの空色の瞳に暗い翳が過ぎったのをシンは見逃さなかった。

「どうも胸騒ぎがしておまえの星を読ませてもらった。おまえの星がざわついている。これは忠告だ。俺に限らず、人の意見には耳を傾けろ。余計なことに首を突っ込まなければ、何も起こらずやり過ごせる」

 シンはふっと口許を緩めて笑った。

 星を読み解く占星術師であるカイがそう言うのなら、きっとこの先、何かよくないことが自分の身に起きるのだろう。

 はっきりとカイは口にしないが、おそらくかなり最悪の出来事が……。そして、未来で起こる最悪の出来事を回避するため、その者に助言を与えるのがカイの本職だ。

 たかが星占い、女じゃあるまいしと馬鹿にすることはできない。
 カイは人の死すらも読み取るという類い希なる能力を持つ占師だ。
 占師として最高位の称号持つカイの右にでるものなど、おそらくいない。

 いいな、と念を押すカイに、シンは肩をすくめわかったよ、と答える。

 思わず笑ってしまったのは、サラの身に何かあったのではと心配をしていたはずなのに、反対に自分によくないことが起こると言われてしまったからだ。

 シンは複雑な思いで、残りの酒に手を伸ばす。
 しかし、わかったとカイに答えたものの、一度ハルの奴に会って、どうなっているのか問いたださなければならないと思った。

 ハルが今どこにいるのかは、裏街の仲間に呼びかければすぐに見つけ出すことはできる。
 それは問題はない。
 シンは暁色の瞳を揺らし、手元の酒盃に視線を凝らす。

 もしも、サラの身に何かあろうとするのなら。
 彼女を守るためならば。
 たとえ、この身がどうなろうと。
 俺は厭わない。
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