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令嬢は元暗殺者に恋をする
第53章 胸騒ぎ
「急に早まった式とやらのせいで、婚礼衣装の仕上げも急がなければならなくなった。今はほとんど職場に泊まり込んでの作業だ」
それで、こんなに夜遅くまで仕事をしていたというわけであった。
エレナは町で王侯貴族御用達の店でお針子として働いている。
まさかエレナの店がサラの婚礼衣装を手がけていたとは思いもよらなかったが。
「だが、それは仕事だから仕方がねえ。それよりも泣いているんだよ」
泣いている……。
シンは整った眉をひそめカイを見る。
「サラは思う人と結ばれなかったのか、てな。仕事だから衣装は仕上げなければならない。本来なら花嫁のために心を込めて手がけるところだが、素直に祝福することができなくて複雑な気持ちだと」
シンは持ち上げていた酒盃を口に運ぶことはなく、テーブルに戻した。
そんなはずがない。
本当にいったい何がどうなっているというのだ。
あいつなら、あのいけ好かない野郎の問題も片付けてくれると思っていた。サラをあの屋敷から連れ去ってくれるだろうとそう信じていた。
なのに、いったい、あの二人に何が起きたというのか。
「それと、もう一つおまえに伝えたいことがある。むしろこっちが俺にとっては本題だ」
いったん言葉を切り、カイはテーブルから立ち上がると、真っ直ぐにシンを見下ろした。
「しばらくおまえ、おとなしくしていろ」
シンは肩をすくめ、はは、と笑った。
「見ての通り、最近の俺はおとなしいだろう? こうして毎晩、ひとり静かに酒を飲んでいるだけ」
何もする気も起きねえしな。
それで、こんなに夜遅くまで仕事をしていたというわけであった。
エレナは町で王侯貴族御用達の店でお針子として働いている。
まさかエレナの店がサラの婚礼衣装を手がけていたとは思いもよらなかったが。
「だが、それは仕事だから仕方がねえ。それよりも泣いているんだよ」
泣いている……。
シンは整った眉をひそめカイを見る。
「サラは思う人と結ばれなかったのか、てな。仕事だから衣装は仕上げなければならない。本来なら花嫁のために心を込めて手がけるところだが、素直に祝福することができなくて複雑な気持ちだと」
シンは持ち上げていた酒盃を口に運ぶことはなく、テーブルに戻した。
そんなはずがない。
本当にいったい何がどうなっているというのだ。
あいつなら、あのいけ好かない野郎の問題も片付けてくれると思っていた。サラをあの屋敷から連れ去ってくれるだろうとそう信じていた。
なのに、いったい、あの二人に何が起きたというのか。
「それと、もう一つおまえに伝えたいことがある。むしろこっちが俺にとっては本題だ」
いったん言葉を切り、カイはテーブルから立ち上がると、真っ直ぐにシンを見下ろした。
「しばらくおまえ、おとなしくしていろ」
シンは肩をすくめ、はは、と笑った。
「見ての通り、最近の俺はおとなしいだろう? こうして毎晩、ひとり静かに酒を飲んでいるだけ」
何もする気も起きねえしな。

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